たなべ未来創造塾-地域から必要とされる新たな仕事を創りだす-
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第5期 事業レポートReport

3日目 田辺市の新たなまちづくりとビジネスチャンス

2020年9月5日
日時 :令和2年9月5日(土)13:30~16:30
会場 :tanabe en+

人口減少が進む中、田辺市では今後どのようなまちづくりを進めていくのか、その中でどこにビジネスチャンスがあるのかを探った。

また、南紀みらい(株)より、中心市街地のまちづくり、特に、市街地活性化施設「tanabe en+」の取組状況について説明し、塾生は、自分たちに何ができるのかを考える機会とした。

講義 田辺市の新たなまちづくりとビジネスチャンス

講師 :田辺市長 真砂充敏
田辺市の新たなまちづくりとビジネスチャンス

田辺市には農林水産や商工観光、歴史文化と、恵まれた資源が揃っている。一言で表すことは難しいほど、あらゆる資源に恵まれている。住み続けられるまちをどう創るか?とよく言われるが、私は、まちづくりの定義には2つあると考えている。一つは[課題解決]。人口減少、高齢化、子育て支援などの地域課題に対応していかなければならない。もう一つは[価値創造]。新たに価値を高めていかないと夢や希望を語るということにならない。そのため、この2つがうまくかみ合う必要があるのではないかと思っている。
たなべ未来創造塾では、地域課題を解決しながら、新しい価値を創造していくという、この両方を目指しているということになる。

課題の中には、ビジネスチャンスがたくさんある。しかし、誰もチャンスとは言ってくれない。それぞれ、皆さんがアンテナを張り、どう捉えていくかが重要だと思う。また、地域は地域全体で創っていくもの。市役所の役割、市役所の中でも市長の役割、民間の役割、それぞれが役割を果たすことができれば、新しいまちづくりが実現できると考えている。

田辺市のまちづくりの変遷を見ると、平成17年5月に合併し新田辺市となったが、合併後は、先ず、各市町村間で協議・策定した「新市建設計画」に基づいた行政運営を10年間行ってきた。
大きな起点となったのが、平成27年。「新市建設計画」に記された事業が進捗していく中、合併10周年を迎えるにあたり、これを単なる10周年と考えるのではなく、新しい田辺市に向けた次なるステップを創っていく節目にしていく必要があることを、私は常々言ってきた。

また、合併10周年にあわせるように、世界遺産登録10周年や紀の国わかやま国体・わかやま大会、吉野熊野国立公園拡張編入、さらには世界農業遺産への認定など、いくつもの大きな波がやってきた。
市では、こうしたことをチャンスと捉え、「たなべ営業室」を設置し、『価値創造プロジェクト』を進めてきた。

なぜ、市役所の部署に「たなべ営業室」という名前を付けたか。

田辺市がまちの魅力を伝えようとしたときに、単純に発信するだけではなく、これからの職員にはプレゼン能力やコミュニケーション能力がとても必要となる。市職員の意識も変えていく必要があるという思いからだった。街なかに関しては、平成21年に中心市街地活性化基本計画を策定し取り組んできた中で、高台に庁舎を移転することについて、市街地の衰退に拍車をかけてしまうのではないかという議論はあるものの、防災面など多面的に考えると苦渋の決断であり、田辺市にとっての大きな決断であった。
とはいえ、財政を圧迫することがあってはならない。田辺市の実質公債比率を見ると、平成17年には約19%であったが、今は約8%と大幅に改善しており、今後、どう影響を及ぼすのかなどについても十分に試算したうえで判断している。

しかし、庁舎が移転するという状況の中で、中心市街地のまちづくりをどうしていくのか。もう一度、考えなければならない。
鬪雞神社が世界遺産に追加登録され、これにふさわしい街並みを整備しなければならないという想いから、駅前刷新事業に取り組んできた。また、まもなく合気道創始者植芝盛平翁の記念館を併設した武道館が扇ヶ浜に完成、南方熊楠顕彰館も含めると3偉人が周遊できるようになる。こうしたことをうまく活かしていく必要があると考えている。折しも、コロナ禍で世の中の考え方、人の生き方などが大きく変わる。こうした中で、これまで通りの事業を展開しても限界が来るのではないか、何とか魅力を上乗せできないか。と皆さん考えていることがよくわかった。

まちづくりといっても、市で出来ることはハード面が中心。やはり地域で活躍するプレーヤーがいないと地域を輝かせることはできないという思いから、「たなべ未来創造塾」を創設した。当初は、年12名の塾生として、5年継続できれば60名、そのうち10~20名がその気になってくれればと思っていた。それが、予想を大きく超える好循環を生み出しており、本当に皆さんには感謝している。コロナ禍に加え、たなべ未来創造塾節目の5期生であること、これまでの田辺市のまちづくりの変遷を踏まえると、皆さんは今、大きな節目にいることは間違いないと思う。

こうした中、IT技術と地域産業をどう結びつけるのか、ようやく完成したこの「tanabe en+」で人と人をどうつなげるのか、コミュニティをどうつくるのか、という視点でも考えてほしい。
「田辺らしいまちを。自分らしい生き方で。」
「田辺らしい」とは、それこそ無数にある田辺市の魅力を一言で伝えているのだが、それぞれ細かな部分でイメージは少し違うかも知れないが、皆さんの「田辺らしい」のイメージは概ね一致していると思っている。皆さんそれぞれテーマがあり、目標があると思う。田辺の資源と自分の個性を生かして、いきいきと、それぞれが活躍して、自分らしい生き方で頑張る。自分らしい生き方が、田辺らしいまちづくりにつながっていけば、合併10周年を記念して作ったキャッチフレーズ「未来へつながる道」が実現できると考えている。

■質疑

市長と塾生との間で約30分間、質疑が行われた。

講義 縁を結び交流と協働を生み出す拠点へ

講師 :南紀みらい(株) 尾崎弘和、和田真奈美、片岡良輔
縁を結び交流と協働を生み出す拠点へ

中心市街地の課題とは何だろうか。
 中心市街地の人口は大幅に減少し、高齢化が進む。空き家率は全国平均より5.4%も高く、商店街における商品販売額も大きく低下し、このことに比例して空き店舗も増加している。

南紀みらい(株)では、これまで、空き家のリノベーションやまちなか活性化事業、産品プロモーションなどに取り組んできた。

こうした中、中心市街地活性化施設「tanabe en+」が完成し、「縁を結び、交流と協働を生み出す拠点」をコンセプトとして活動している。

その取組の一つである企画展では、今年度4回程度を予定しており、「葉っぱ」「ごはん」「おくりもの」「酵母」などそれぞれテーマを絞り、それに関連する商品などをコラボさせつつ、そのモノにある背景やストーリーを丁寧に伝える新しいプロモーションに挑戦している。

8月10日にオープンし、これまでの来場者を見ると、30~40歳代が59%、女性が66%を占め、その層の客単価も高いという状況となっている。

2階のワークスペースでは、コワーキングスペースと貸し会議室、レンタルスペースを基本事業とし、マッチング(創業支援)、商品開発(産品プロモーション)、交流促進(コミュニティ醸成)の3つの柱で取り組んでおり、今後、数多くのイベントやセミナー、交流会などを計画している。

是非、「tanabe en+」を活用してほしい。