魚津三太郎塾第6期
魚津市/富山大学
地域課題と企業課題を解決する地域プロジェクトの創造 いざ未来形魚津へ!

事業レポートReport

魚津三太郎塾第7期8日目
コミュニティビジネス育成起業化論

日時:平成30年11月8日(木)14:00〜17:00
会場:魚津市役所 第5・6会議室

魚津三太郎塾第7期の8日目が開講。コミュニティビジネス育成起業化論として,和歌山県田辺市の「たなべ未来創造塾」から講師を招き,地域課題解決のまちづくりへの取組や同塾修了塾生が実現させたプロジェクト内容についてヒアリングし,ビジネス手法での地域課題解決やコミュニティビジネスのケーススタディをおこなった。

8日目第10限 講義
コミュニティビジネス育成起業化論① 
講義①たなべ未来創造塾〜ローカルイノベーターたちが地域を救う〜

講師:和歌山県田辺市企画部たなべ営業室 鍋屋安則氏
8日目 コミュニティビジネス育成起業化論①

最初に田辺市の位置や地域資源となる世界遺産の熊野古道や温泉,温暖な気候を生かした農産品の梅や柑橘などを紹介。人口や面積・産業・観光について魚津市と比べながら田辺市について説明。

特に人口の減少については全国平均より早いスピードで進み,将来的に山村地域を中心に非住居地域が増加すことが予測され,経済面でも内需に依存していることから人口減少の影響が直撃することから,田辺市が目指す方向として地域外から人を呼び込む交流人口の増加と外貨を獲得し地域内で経済を循環させる地域経済の活性化が必要であり,その人材発掘と育成が必要性を模索中に地方創生を先取るプロジェクトを富山県の魚津や高岡で進めてきた富山大学の金岡教授の存在を知り,「価値創造プロジェクト検討委員会」の委員長を依頼し,戦略ビジョンプランを策定。

このビジョンプランでは,地域が生き残るために地域で稼ぐプレーヤーとなる地域イノベーターの育成がキモであり,田辺市と富山大学の間で「人材育成の連携に関する覚書」を締結し,田辺市から鍋屋氏が共同研究員として富山大学へ派遣され「たなべ未来創造塾」が具体化したと説明。魚津三太郎塾と同様な地域課題の解決や地域資源の活用をビジネスの手法で考える人材の育成とビジネスモデルの創出を目的に,産官学金が一体となった運営体制を構築し,平成28年7月に開講,今年で3期目となり,これまで24名の修了生を排出,事業実行率は70%を超えていると紹介した。

修了生たちは他にはマネのできない地域に根ざしたビジネスプランを生み出したと話し,同塾から生まれたプロジェクトを紹介。市内の空き家・空き店舗を活用した地域と観光客・居住者を結びつけるエンゲージメントハウスを作るプロジェクト事業,食品加工と地域連携によって生まれるサードプレイスを作りだした事業や修了生の姿や経歴などを紹介した。

修了塾生たちがそれぞれのプロジェクト実現に動き出し,自分たちの地域は自分たちで守っていく意識で地域に根ざした小さいビジネスをいっぱい創り,それを繋げていくことで強い力となってきていると話した。先進的に取り組んでいる魚津三太郎塾は偉大であり,プレーヤー(修了生)の多さは大きな武器で,繋がっていくことで新しい価値が生まれ,他の地域をリードしている今がチャンスと塾生を激励した。

講義②ひなたの山の物語〜地域商社を目指して〜

講師:岡本農園 岡本和宣氏
8日目 ひなたの山の物語〜地域商社を目指して〜

たなべ未来創造塾第1期生として学び,プロジェクト事業として取り組んでいる「農人と森の番人プロジェクト」の取組について紹介。岡本農園がある田辺市上芳養地区の人口や環境、産業や暮らし等の概要を紹介。

自身が家業に就き農産物直売所での対面販売を経験し農業が面白くなったエピソードを交え,農業の地域課題である農業者の高齢化による作付面積の減少,担い手不足による耕作放棄地の増加,深刻化する鳥獣被害,農産物の不安定収入,人口減少による雇用確保などの地域課題が負のスパイラルとなっている現状を説明。

人口減少に伴いイノシシ・シカなどが増え続け,農業収入の減少を引き起こしていることから鳥獣害対策が緊急課題であり,この課題解決のために「農人と森の番人プロジェクト」を提案し取り組んでいると経緯を説明。自分たちの地域は自分たちで守ろうを合言葉に若手農家メンバーによる狩猟チーム「チームひなた」を結成。獣害対策と狩猟活動により,獣害被害が減少し地元農家から感謝の声があがったと成果を報告。命と向き合い駆除だけでなく資源化を考え,獲物の解体処理場や加工施設との連携を図り,狩猟者の負担軽減や地域産品としての活用への取組をしていると説明。

具体的な取組について,料理人との連携によるジビエ料理の提供に取組み,地域と連携を図ってジビエ料理と上芳養地区を知ってもらう交流イベントの開催,食の原点を知ってもらう体験イベントツアーの企画,農業体験や狩猟ツアー,解体見学といったグリーンツーリズムなどの活動を紹介。耕作放棄地を活用して新しい地域産品生産やビジネスチャンスを見いだす活動も取り組み,地元保育園や障害者福祉施設と連携した耕作放棄地再生プロジェクト,地元高校と連携した摘果みかんの商品開発の取組を紹介し,地域の住民を巻き込んだ活動に拡げている様子を伝えた。

活動をして気がついたことは地域課題から新しいビジネスが生まれ,地域を巻き込み人を活用すること,地域を知ることで潜在的地域資源を発見・活用し地域全体を巻き込んで地域活性化を図りたいと話した。クラウドファンティングを活用した地元住民と地域外の人が交流しながらイノベーションを起こす拠点づくりへの挑戦や今後のビジネスモデルへの構想を示し,チームひなたから地域商社株式会社日向屋として今後活動していく意気込みを語った。

質疑応答

今回の講義内容に関しての質疑応答が行われた。未来創造塾修了生の各事業内容の詳細についてやチームひなたの事業に取組む仲間集めのキッカケや狩猟体験の内容,加工施設運営や子供たちへのアプローチ,クラウドファンティングについてなどの質問に講師たちは応えた。

8日目個人ワーク/意見発表

論点:事業プラン立案の思考

今回の講義内容をケーススタディとして,地域課題・企業課題は何だったのか,活用する地域資源は何だったのか,経営資源や特徴など活用した企業の強みは何だったのか,地域と企業の共通価値(地域課題と企業課題の共通解決策)は何だったのか,その波及効果はどうか,地域と企業の将来像(展望・効果)は何かを,塾生たちは個人ワークシートにまとめた。

まとめた内容を各項目毎に発表し,講師から内容の不足部分やさらに深い説明,追加する話題やコメントが加えられ,塾生の理解を深めさせ,地域課題と企業課題を共通解決し,地域の将来へ続くビジネスについて考え,自らの事業プラン立案への思考を深めた。最後に,金岡教授から塾生たちへ「地域の課題をひっくり返すと戦略になる。CSVとは何か,一つの課題に取り組むことで見えてくるかもしれない。まわりが集まってくるビジネスを考えていきましょう」とエールが贈られた。