魚津三太郎塾第6期
魚津市/富山大学

事業レポートReport

魚津三太郎塾第6期1日目

日時:平成29年7月31日(月)14:00〜17:00
場所:魚津市役所 第1会議室

魚津三太郎塾第6期の1日目が開講。初回は,本塾テーマの『魚津の水循環』の根幹となる「高低差4000環境論」として,富山の水資源と富山湾についてを科学的な解析や地球環境の観点から講義を受け,生命循環の源である水循環と背景にある魚津の自然環境と魅力的な特異性について学んだ。

1日目第1限 
講義&討議 高低差4000環境論① 水・物質循環〜富山の水資源と富山湾〜
      とやまの名水を科学する〜水質・同位体組成から探る富山の水循環の森〜

講師:富山大学理学部 生物圏環境科学科 教授
   富山大学大学院 理工学研究部 教授 張 勁氏

講師:富山大学理工学教育部生物圏環境科学専攻 片境紗希氏
1日目第1限 水・物質循環〜富山の水資源と富山湾〜

講義冒頭に,知識や常識には落とし穴がある。知識も日々進化していて過去の常識が現在も正しいとは限らない。疑わしいと思ったら自ら確かめることが重要であると研究者としての基本の考え方を伝え学ぶ姿勢を塾生へ伝えられた。

環境省が選んだ日本の名水百選に選ばれた名水数は,昭和版・平成版合わせても北陸・富山が全国で最も多いことを示し,富山は熊本と並び8件と日本一であるが,熊本県は日本一の水と県をあげて誇っているのに反して富山県は謙虚なのかそれほどでもないと評し,富山・魚津の水資源の素晴らしさを伝える必要性を示した。

富山の名水について片境氏から研究内容を発表。北陸・富山に名水の数が多いのは富山の豊かな自然が影響した水循環があるからと説明。富山の豊かな水循環は暮らし・産業を支える役割をもっているが,近年,消雪や工業利用などの地下水利用の影響もあり名水の湧出量減少が報告されており,名水保全のためにも起源や水質の変化などの情報が必要となるので調査研究を続けていると話した。今年,魚津の水『うおづのうまい水』が品質の世界水準評価をする「モンドセレクション」に初出品され最高金賞を受賞したり,県内各所の水道水が金賞受賞しているが富山県の水は,主観的な人の舌だけでなく,科学的に分析して本当に美味しいのかを調査。魚津や県内の水,他地域の水でのイオン分析結果をグラフにプロットした図形を示し科学的にも美味しい水であることを証明した。

また,実際の人の舌による利き水調査でも半数以上が美味いと評価していたと紹介し,水のDNAともいえる分子構造の中で酸素同位体の分析によりその水の出所が判別できると説明。富山の名水の起源は山岳中腹の森林域であったことから名水と森林は深い繋がりがあるとし,富山の自然によって磨かれた水資源は富山の宝であると話した。

質疑

1日目第1限 質疑

塾生からここまでの講義で生じた質問を受け付けた。雨の成分や水の循環や名水について,水の成分調査や市内地下水の場所による違いなど質問がよせられた。張教授より雨は蒸留水で基本成分は同じで,森が水を変えると説明。富山の地形や自然環境により豊富な雨量があり特に冬の降雪量が積雪という白いダムとなり豊かな水資源となっていると説き,水は最大の資源であるのに充分にその資源を使い切ってないと話した。また,近年の降水量の変化,特に降雪量の減少は富山の水資源に大きく影響を及ぼし過去の価値が変化していると話し,水資源をどう活かすかは科学者の仕事ではないのでこの塾でぜひ考えてみて欲しいと告げた。

講義後半

1日目第1限 講義後半

「樹一本ブリ千本」という言葉を紹介し,富山湾の海の豊かさは森の恵みの影響で水の輪が作った奇跡であることを説明。富山湾の海底湧水の測定調査の結果を魚津での調査エピソードを交え発表し,水の分子同位体分析とトリチウム濃度の分析による年代判別で,海底湧水は標高800〜1200mでの森林域での降水が地中に浸透し10年から20年かけて海に辿り着いたと説明。魚津村木小学校の植林活動の取り組みを例に森の整備が豊かな海には重要なことであると話し,高低差4000mの地形が50kmエリアに存在する世界でも珍しい魚津のユニークな地理的環境について解説され水循環をテーマにする価値を伝えた。

さらに,「天然のいけす」とも称される富山湾についても講義。日本海に生息する魚介類800種のうち500種が富山湾に生息を確認されていると話し、富山湾内の地形や環境を解説し,陸起源の栄養素が富山湾の魚を育てていると話した。また,話題提供として,近年のブリの不漁の要因ついて海環境やエサ環境などをあげ富山湾に回遊しなかった理由を解説。

日本海の表層海水温の上昇など海洋環境の変化はエサとなる生態系や海流の変化をもたらし今後魚種の変化が予想されると話した。日本海は世界海洋大循環のミニチュア版であり,日本海を調べることで,世界を知ることにつながるとし,「すべてのものは水で繋がっている。水で環境の変化を知ることができる。水の状況は変わっていることを知り,使い方を変えていかなければならない。温暖化に合った生活対応をしていかなければならない」と話した。

質疑・討議

テーマ:魚津の自然

論点1:「魚津の水循環」の魅力,全国的・世界的な価値
論点2:それを維持しながら活用していくには?誰のため,何のために?今後のゆくえ
1日目第1限 質疑・討議

今回の講義内容の質疑応答や感想をもとにした討議がおこなわれた。塾生からは,海洋環境や気候の変化,温暖化について,水資源の活用についてや湧水に影響を及ぼす森林帯についてなど様々な視点からの質疑がなされた。

張教授からは富山の水資源の重要性や富山湾の魅力,魚津の特異性などが示され,温暖化については「止められないが遅らせることはできる。急激な変化が悪影響をきたす。極力遅らせるよう対応して順応した生活をおくるようにするべきである」と説明。魚津の水循環をテーマにしている本塾の理由と可能性を塾生たちは様々に感じ取った。