たなべ未来創造塾-地域から必要とされる新たな仕事を創りだす-
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第4期 事業レポートReport

5日目 小規模多機能自治の取組

2019年9月14日
日時 :令和元年9月14日(土)14:00~17:00
会場 :田辺市役所別館 3階 大会議室

たなべ未来創造塾3日目の講義では、人口減少が進む中、全国で注目されている「小規模多機能自治」の考え方や取り組みを学ぶとともに、ケーススタディとして、地域課題をビジネスで解決する、人口減少を歯止めする、(株)日向屋の取組について学んだ。

講義 小規模多機能自治の取組

講師 南砺市南砺で暮らしません課長 市川孝弘 氏
たなべ未来創造塾第4期 小規模多機能自治の取組

人口減少が進む中、役員のなり手が不足しているにもかかわらず、行事は減らない。
一方で、交通弱者や買い物難民が増えるなど、地域課題は山積している。
今後、人口減少がさらに進行することで、こうした地域課題がますます顕在化することが予測される。

南砺市では、平成24年3月に「南砺市まちづくり基本条例」を可決し、協働のまちづくりを進める中で、平成28年9月にIIHOE川北秀人氏の講演を聞き、そこで「小規模多機能自治」をはじめて知り、「行事を半減して、事業=福祉+経済を」「イベント(祭)からサービスへ、役から経営へ」という考え方の転換が持続可能な地域づくりには重要であると認識した。先進地として知られる島根県雲南市では、既に市内全域に30の組織が立ち上がり、それぞれが自主的な事業を展開している。
例えば、お年寄りの見守りを兼ねて水道検針を請け負う事業「まめなか君の水道検針」や、買い物難民やお年寄りのコミュニティづくりのため、産直市+サロンを運営している「笑んがわ市」など。
「小規模多機能自治」は、人口減少の歯止めにつながるのだろうか。
地域が総働し、地域課題を解決することで、人が住み続けられる地域を目指しながら、その一方で、毎年人口の1%を取り戻す「1%戦略」を実践する。
例えば、1,600人の集落の場合、人口の1%に当たる16人をUIターン(2組の30歳代前半夫婦で4歳以下の子ども連れ、3組の20歳代前半の夫婦、2組の60歳代前半の夫婦とした場合)させることができれば、人口減少は歯止めするのである。(特殊出生率も考慮する必要あり)
市全体で考えるのではなく、小規模の地域ごとに考えていくことによって、地域住民は人口減少対策を具体的にイメージし、住民自らが地域課題を解決しようという「小規模多機能自治」へとつなげていく必要があるのである。

「小規模」とは旧小学校単位、「多機能」とは地域の課題解決に結びつく多面的な活動でありイベントではなくサービスや経営の視点で取り組んでいくこと、「自治」とは行政ではなく住民自治を表しており、こうしたことが持続的な地域づくりに重要で、その結果地域では、「行政がやってくれない」から「行政がやらしてくれない」へと変化しつつあり、新しい公共の創出へと進展している。

南砺市では、31ヵ所の地域で地域づくり勉強会を実施するとともに、アンケート調査を実施し、課題を分析・把握する中で、小規模多機能自治の取組を推進するため、住民自治の担い手となる住民が参加のもと、全6回からなる市民会議を開催し、市街地や平野部、山間部にグループ分けし、それぞれのグループで議論を深め、最終的には提言書を取りまとめ、平成31年4月よりついにスタートを切ることができたのである。
 このまま何もしなければ、間違いなく人口は減少していく。人口減少に歯止めをかけるため、地方にとって「小規模多機能自治」の取組は今後ますます必要になるのだろう。

講義 ひなたの山の物語

講師 (株)日向屋 岡本和宜 氏(1期生)
たなべ未来創造塾第4期 ひなたの山の物語

たなべ未来創造塾第1期生でもある岡本氏より、地域課題である鳥獣害対策をビジネスの視点で考えることで、自分の本業である農業を守りながら、地域資源として活用していこうという(株)日向屋の取組について説明した。

ホテルマンの経験を経て、実家の農業を継いだものの、経営を任された際、自分が育てた作物の価格を自分で付けられないことに違和感を覚え、自分で販売ルートを開拓し始め、今では系統出荷がゼロとなっている。 こうした中、たなべ未来創造塾の講義を通じて、地域課題をビジネスの視点で考えるうちに、地域課題を解決しないと農業を守ることができないということに気づき、大きな地域課題となっている鳥獣害対策に正面から取り組みながら、これまでにない新しいビジネスを生み出していこうと地域の若手農家でチームHINATAを結成し、「かっこいい」「稼げる」「革新的」という新3Kに向けた活動を始めることとした。

狩猟については、活動3年半で約400頭の捕獲に成功し、地元農家からも「被害がなくなった」、「若い世代がやってくれるから助かる」など感謝されている。しかし、奪った命をそのまま廃棄していることに疑問を感じ、どうすれば命と向き合い無駄にしない活動ができるのかを考える中で、地域を巻き込み、解体処理場を誘致することに成功し、地域の厄介者である鳥獣害を地域資源に変えることができた。 さらに、解体したものを食べるところまで取り組むことで、販路拡大につなげようと、地元出身のシェフと連携し、ジビエ料理試食会を開催するなど、獲るだけでなく、解体して食べるまでを一体的に取り組む活動へと進化している。

他にも獣のエサ場となっている耕作放棄地をなくそうと、地域の保育園と連携し、トウモロコシを栽培したり、地元高校生と連携し、これまで捨てられていた摘果みかんを活用したスムージーの開発、狩猟体験ツアー、ワーケーションの受入など、活動の幅を広げている。 こうした取り組みがきっかけとなり、この地域に住みたいと思う人たちがやってくるようになり、結果として、人口減少の歯止めに繋がっている。

最後に4期生へのメッセージとして、

  1. モノよりコミュニティの時代。どんな仲間を持てるのか。
  2. 何をするかより、誰とするのか。
  3. 商品を売るのではなく、自分を売る。
  4. 自分の価値を上げることで、あなたと仕事したい。
  5. 枠にはまるな。(常識にとらわれるな)
  6. 地域の魅力は自分たちで創るもの。

これが、(株)日向屋が考える持続可能な開発目標「SDGs」だとして、講義を締めくくった。