たなべ未来創造塾
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第2期 事業レポートReport

5日目 世界遺産熊野古道の価値をビジネスチャンスに

2017年9月30日
日時 :平成29年9月30日(土)14:00〜17:00
会場 :田辺市文化交流センター たなべる 2F大会議室

「紀伊山地の霊場と参詣道」が2004年に世界遺産に登録され、地域がどのように変化してきたのか、また駅前刷新事業などの大型プロジェクトを控え、今後どのように変化していくのか、ビジネスチャンスはどこにあるのかを探った。

講義 世界に開かれた持続可能な観光地を目指して

講師 :田辺市熊野ツーリズムビューロー会長 多田稔子 氏
5日目 世界遺産熊野古道の価値をビジネスチャンスに

官民協働の観光プロモーション団体として設立し、地元の受入体制の整備を図るとともに、着地型観光商品の開発を手掛け、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)主催の「明日へのツーリズム賞」に日本で初めてファイナリストとしてノミネートされるなど、世界から高い評価を得ている田辺市熊野ツーリズムビューロー(以下「ビューロー」という)。これまでの取組や観光客の動向などを紹介しながら、どこにビジネスチャンスがあるのか、そのヒントを探った。

2006年にビューローを設立し、ターゲットを欧米豪のFIT(個人旅行客)に絞り、持続可能で質の高い観光地を目指した取組を進めてきた。

まず、外国人を呼び込むには外国人の感性が必要と考え、外国人スタッフとしてブラッド・トウル氏を迎え、ローマ字表記の統一や各種セミナー、指さしコミュニケーションツールの作成などを通じ、現地のレベルアップを図った。

さらに情報発信として、イベントやプレスツアー、エージェントツアー、サンティアゴ・デ・コンポステーラとの共同プロモーションなどの取組を行ってきた。

しかし、知名度が高くなるにつれ、「熊野古道を歩きたいが、どうやっていけばいいか?」「旅の行程をどう組めばいいか?」という問合せが増え、これまで運ぶ仕組みがないのに、無責任なプロモーションをしていたことに気づき、宿泊予約、決済などのシステムや個人旅行者に対するプランニングサポート等を行うため、旅行業の資格を取得し、着地型旅行業(DMC)のサービス開始に至った経緯を説明。
外国人旅行者と地域との間には、「言葉」と「決済」という2つの大きな壁があり、ビューローは、その壁を取り除くという大きな役割を果たしている。サービス開始後、2011年には約4千万円だった売り上げが2016年には3億円を超えるまでに成長。利用者全体の83.9%が外国人観光客で、うち84.9%がインターネット予約、国別でみると欧米豪が大半を占めている。

これまでの地道な取り組みが地域の価値を上げ、地域の誇りの再構築につながっているとした。
また、これからの戦略として、当日予約や決済、荷物の一時預かり、グッズ販売などを取り扱う「熊野トラベル」をオープンさせたことに触れるとともに、「熊野古道女子部」を立ち上げ、日本人観光客の誘客に向けた取組にも着手していること、さらに、もう1泊2泊と伸ばすためのアクティビティ開発を目指した「熊野古道+(プラス)」、熊野エリアにある技術や産品を組み合わせ、新たな熊野の商品を開発する「熊野古道×(クロス)」の取組にも着手していることを説明。塾生に対し、是非提案してほしいと伝え、講義を終えた。

講義 外国人観光客のための、ほっとステーション

講師 美吉屋旅館 吉本 健 氏 (1期生)
講義 外国人観光客のための、ほっとステーション

15年ほど前、美吉屋旅館に宿泊する外国人観光客は1年間で数名であったが、現在では1ヶ月に100名を超えることも珍しくないという状況になっている。

しかし、外国人観光客が増える一方で、多くの課題も生じており、例えば、宿泊先の予約を取っていない、日本円を持っておらず外貨両替機がない、山歩きの装備を全くしていないなど。観光案内センターでは9:00〜18:00しか対応できないため、美吉屋旅館ではフロントが空いている5:30〜0:00までサービスとして提供することで顧客確保に繋げているとした。

また、客層の移り変わりを見ると、創業当時は建築関係の作業員や富山県からの薬の営業マンが中心であったが、白浜のホテル建設ラッシュや南紀白浜空港の建設などで建築関係の宿泊者が増え、白浜アドベンチャーワールドができ家族客が増加し、スポーツ施設の整備によりスポーツ合宿が増加、熊野古道が世界遺産に登録されたことで外国人観光客が増加するといった経過をたどっている。最近では旅館丸ごと貸切りプランを始め、大学生の利用が増えている。

現在、美吉屋旅館における外国人観光客の利用は全体の3割ほど。やはり日本人客が中心であるものの、その利用は減少傾向にあり、減少分を外国人観光客で補っているという状況であるとのことであった。
また、季節により客層に違いがあり、1〜2月の閑散期をどう埋めるかということが重要なポイントとなっているとした。

外国人観光客の特徴として、土産物はあまり買わない、比較的早い時間に着くことが多く、時間をつぶす場所を探している、ベジタリアンが多い、気軽に食べられるものが好き、7割くらいがJRパスを持っている等々、現場ならではの情報を提供し、講義を終えた。

質疑及びディスカッション

<論点①> 世界遺産による地域の変化
<論点②> 課題はどこにあるのか、どこにビジネスチャンスはあるのか
5日目 世界遺産熊野古道の価値をビジネスチャンスに 質疑及びディスカッション

塾生からは、外国人観光客はどれくらい費用を使うのか、熊野古道以外に興味はあるのかなど、多くの質問が出され、全員で旅行者の具体的な行動パターンを共有した。

また、人口減少が進む中、外国人観光客を取り込むことは必要不可欠であり、新たなビジネスチャンスとして農泊やアクティビティ、ベジタリアン対応などが挙げられた