日時 | :平成29年12月2日(土)14:00〜17:00 |
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会場 | :たなべる 2階 大会議室 |
田辺市における地域課題の重要な視点の一つである「高齢化」をテーマに、地域はどのように変化するのか、どこにビジネスチャンスがあるのかを探った。
講師 | :三菱UFJリサーチ&コンサルティング 社会政策部長 上席主任研究員 岩名礼介 氏 |
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日本では、これまで一番のボリュームゾーンである「団塊の世代」をターゲットにし、 常にその世代が何を求めているかということを考えながら、ビジネスを変化させてきた歴史がある。
「団塊の世代」は、60歳半ばを迎え、何を求めているのだろうか。
今の60歳半ばは、見た目も若く、元気で、しかも十分な貯蓄がある層も増えており、旅行や食事などにお金を使う。
しかし、私たちが考えなければならないのは、10年後、「団塊の世代」が70歳半ばになった時、何を買いそうかと予測することが重要であると語った。
「団塊の世代」は、10年後には後期高齢者となり、生活への支援や介護が必要となるケースが徐々に増え、旅行や食事など趣味嗜好にお金を使うことが少なくなる。今後、「団塊の世代」が求めるものは短期間で大きく変化するというのだ。
75歳以上の後期高齢者は2030年頃をピークに、その後、緩やかに減少していく。それに対して、15〜64歳の生産年齢人口は大幅に減少。少ない人数で75歳以上の後期高齢者を支えなければならない状況が生じる。
そのため、医師や看護職、介護職がそれぞれの役割を少しずつシフトし、担い手不足を補う必要がある。「ロールシフト」という考え方だ。岩名氏は、これまで介護職が中心に担ってきた買物、調理、掃除などの生活支援の領域に携わる人が大きく不足することから、福祉の専門職以外の人たちが支える側にまわることが重要であり、そこにビジネスチャンスがあると説いた。
要介護者の場合は、支援が必要となる部分が大きいため、一般的なサービスとして対応できるが、要支援者の支援は、「ちょっとだけ」支援になることも多く、サービス化するには効率が悪いという問題もある。要支援者が必要としているサービスは掃除、買物、調理をはじめ、生活の細かい部分での支援。小さくサポートすることをいかに効率化できるかが、ビジネス上のポイントだ。
地域住民の動きも変化している。たとえば、住民が自主的に活動している体操教室。人が集まると自然と仲間を助けたくなるという現象が起きる。ただそこに楽しみで集まっているだけ、ただ来ているだけであったものが、声掛けになり、困っているならみんなで助け合おうという動きが出始めることがある。
こうしたコミュニティの拠点づくりが、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けることにつながると述べた。まさしく「地域づくり」である。
その一方で、ボランティア要素が高く、事業化が難しいのが現状である。そこで、実際のビジネス事例を紹介しながら、いかに一体的にサービスを提供することができるかが重要で、そうすることで高齢者との信頼関係が生まれ、安心してサービスを受けることができる。しかし、自分一人で抱え込むことはない。いろんな「人」と連携しながら、いかに一体的なサービスに見えるかが大切であるとした。
超高齢社会とビジネスとの両立。介護保険の枠組み内だけの対応には限界がある。しかし、担い手が不足するこれからの時代では、生活支援サービス市場における潜在的な需要がますます高まることが予測される。そのためのポイントは「コミュニティの形成」と「一体的なサービスの提供」、これらを結びつける「仕組みづくり」に答えが隠されているのかもしれない。