日時 | :平成28年9月3日(土)14:00~17:00 |
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会場 | :田辺市役所 3階 第一会議室 |
2004年、世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」、十数年が経過し、地域がどのように変化してきたのか、また鬪雞神社などの世界遺産追加登録を間近に控え、今後どのように変化していくのか、ビジネスチャンスはどこにあるのかを探った。
講師 | :田辺市熊野ツーリズムビューロー会長 多田稔子 氏 |
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官民協働の観光プロモーション団体として設立し、地元の受入体制の整備を図るとともに、着地型観光商品の開発を手掛け、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)主催の「明日へのツーリズム賞」に日本で初めてファイナリストとしてノミネートされるなど、世界から高い評価を得ている田辺市熊野ツーリズムビューロー(以下「ビューロー」という)。これまでの取組や観光客の動向などを紹介しながら、どこにビジネスチャンスがあるのか、そのヒントを探った。
世界遺産登録直後は、1日100台もの観光バスが押し寄せたものの、少しだけ立ち寄り、すぐに去っていく。これでは「熊野」の本当のすばらしさが伝わらないと感じていた。そのため、2006年にビューローを設立し、ターゲットを欧米豪のFIT(個人旅行客)に絞り、外国人スタッフを起用する中で、観光プロモーションに取り組むとともに、あわせて案内看板の設置、指さしツールの作成などにより現地のレベルアップを図った。
しかし、知名度が高くなるにつれ、「熊野古道を歩きたいが、どうやっていけばいいか?」「旅の行程をどう組めばいいか?」という問合せが増え、これまで運ぶ仕組みがないのに、無責任なプロモーションをしていたことに気づき、宿泊予約、決済などのシステムや個人旅行者に対するプランニングサポート等を行うため、旅行業の資格を取得し、着地型旅行業(DMC)のサービス開始に至った経緯を説明。
サービス開始後、2011年には約4千万円だった売り上げが2015年には約2億円にまで成長。利用者全体の75%が外国人観光客で、うち87%がインターネット予約、国別でみると欧米豪が大半を占めている。また、外国人観光客は滞在期間が長く、本宮や中辺路の他にも那智勝浦町や新宮市など熊野三山をあわせて巡るコースが多いのが特徴。京都や広島など全国各地の観光地を訪れる行程の中に組み入れられているケースが多いという。
人口減少が取りざたされる中、本当に地方はやっていけないのだろうか。
観光入込客数を見ると、宿泊客、日帰りとも右肩上がりとなっている。こうした追い風を地域経済につなげていけないのだろうか。
日本の地方都市では、徳島県上勝町の葉っぱビジネスや高知県馬路村の柚子など、地域人口が少なくても地域の強みを生かし、多くの外貨を獲得している地域ビジネスの事例がある。一方、海外でも、イタリアでは、小さな都市単位で食品加工や家具、靴などが地域の産業として集積しているクラスターの事例もある。こうした事例を参考にしながら、外貨を稼ぎ、地域で経済を循環させる。これができれば田辺市は生き残れるのではないかと話した。
講師 | :田辺市観光振興課長 小川雅則 氏 |
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田辺市では、これまでの欧米豪のFIT(個人旅行客)をターゲットにした取組が功を奏し、田辺市を訪れる外国人観光客は2015年には、2009年対比1308%と著しい伸びを見せており、国別ではオーストラリア・ニュージーランド、米国、スペイン、フランスといった欧米豪が圧倒的に多い。一方、和歌山県全体では中国や香港、台湾といったアジアが中心となっていることを説明。
また、追加登録を見据え、市では、トイレや案内看板、ポケットパークの整備、修景・景観整備などのハード事業に取り組むとともに、協議会の設立や記念行事の開催などを通じたソフト事業にもあわせて取り組んでいることを説明した。
今後も観光客の増加が見込まれる一方、滝尻や高原、近露、野中エリア、まちなかに宿泊施設が不足しているとともに、交通アクセス等二次交通が十分でないなどの課題があるが、こうした課題をビジネスチャンスに変えることができないかとその可能性を示し、講義を終えた。
論点① | :世界遺産による地域の変化 |
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論点② | :課題はどこにあるのか、どこにビジネスチャンスはあるのか |
論点③ | :自分の企業で何ができるか |
世界遺産登録後、欧米豪を中心とした外国人観光客が大幅に増加し、従来の団体旅行ではなく、個人旅行客が中心になるなど、大きく変化。
こうした中、鬪雞神社などの世界遺産追加登録を間近に控え、さらに国ではインバウンドを倍増させる目標を定めていることもあり、ますます交流人口の増加が見込まれる。
その一方で、受入体制の更なる充実が望まれ、特に宿泊施設が不足しているといった課題があることから、空き家を活用したゲストハウスなどにビジネスチャンスがあるのではないか、また外国人が回遊できるよう、オープンカフェや土産物、ビーチの活用など外国人のニーズを深く掘り下げる必要があるのではないかといったことをディスカッションし、4日目の講義を終えた。