日時 | :平成28年10月22日(土)14:00~17:00 |
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会場 | :たなべる 2階 大会議室 |
身近な市内のビジネス事例が、何の地域課題を解決し、どのような地域資源を生かしているのか、またビジネスに隠された「仕組み」は何かを探るため、秋津野ガルテン代表取締役社長、玉井常貴氏を招き、「秋津野ガルテン」「秋津野直売所きてら」などの取組を学んだ。
講師 | :秋津野ガルテン 代表取締役社長 玉井 常貴 氏 |
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どうすれば地域は生き残ることができるのだろうか。
上秋津地区では、様々な地域課題に向き合い、地域が一体となって考え、行動に移してきた。 ソーシャルビジネス、6次産業化の事例として、今では全国から注目される存在となった「秋津野ガルテン」。その秘密を探った。
玉井氏は、理論ではなく、現場を経験しながら積み上げ方式で取り組んできた結果だとし、大きなポイントとして次の4点をあげた。
<ポイント1>地域資源を活用する(特に「人」は大きな資源)
<ポイント2>地域ビジネスに地域組織を活用する
<ポイント3>ボランティアではなく、地域産業(ビジネス)へ
<ポイント4>物語をどのように作るのか
上秋津地区では、幅広い合意形成ができ、地域づくりや地域行事などでスピーディーな決断ができる組織が必要と認識する中で、地域内の各種組織を網羅した「秋津野塾」を結成。様々な活動が評価され、平成8年には地域づくりの最高栄誉である「天皇杯」を受賞している。
こうした中、さらに持続可能な地域づくりを進めるためには、地域経済に結び付ける必要があるとの思いから、地域住民の出資で「秋津野直売所きてら」を立ち上げた。しかし、早々に倒産の危機に見舞われる。そこで運営を救ったのが、地域資源であった。上秋津地区は80種類以上もの柑橘が栽培される全国でも稀な地域。その柑橘を中心に、地域の産品を詰め合わせた「きてらセット」を販売したところ、大反響を呼び、経営を立て直すことができた。当初10坪の中古プレハブではじめた小さな取組が、平成15年には売り場面積の拡大、新たに加工場を建設するなど、新築移転。平成18年には法人化にも着手し、今では1億5000万円を超える売り上げをあげ、地域の雇用確保にも繋がっている。
また、あわせて10年先を見据えた計画づくりに着手。地域が生き残るためにはどうすればよいか、様々な会議等を通じて地域住民自らが考え、マスタープランが完成した。
こうした中、小学校移転計画が持ち上がる。地域の方々が学んできた歴史ある木造校舎が取り壊され、別の場所に新築されることとなった。
地域では、マスタープランの実践に向け、1年をかけて、木造校舎利用の方向性や基本的な考え方を地域住民だけでなく、先進地の実践者、大学、行政職員などとともに検討し、市に提言したものの、市有施設にすることは困難となり、運営会社を自分たちで作るという決断をする。
しかし、当初は、反対者が続出、計画がとん挫しかけていた。地域での会議を繰り返す中で、ある高齢者がいう。「地域が元気な時にやらないとできない。任せてみよう。」と。そこから流れが大きく変わり、当初反対していた人からも出資、平成19年、ついに運営会社が立ち上がった。 そして、完成した施設を「秋津野ガルテン」と名づけた。
地産地消、地域女性の雇用、農村との出会いを目的にした農家レストラン「みかん畑」。当初年1万人と想定していたが、予想をはるかに上回る4万人が来場。 併設した宿泊施設では年2,300人が利用。平日は外国人観光客が多く、週末は国内観光客が中心という。
また、農業をより身近に感じて頂くため、農家民泊にも着手。ワーキングホリデーや外国人の修学旅行受入にまで広がりを見せている。 さらに、地域のシンクタンク機能が必要という思いから、中間支援組織「(社)ふるさと未来への挑戦」を立ち上げるなど、地域の挑戦はまだまだ続いている。
最後に、玉井氏は、ソーシャルビジネス、CSVに向けた取り組みの重要な考え方として次の3つを示し、講義を終えた。
<社会性>地域が抱える課題、農業が抱える課題をいかに解決していくか
<事業性>いかに継続的、持続的に事業を進めていくか
<革新性>これまでにない商品・サービスや、仕組みを開発・活用していくか
講義のあと、塾生と講師との質疑&ディスカッションが行われた。人口減少が進む中、地方(地域、企業)が生き残って行くためには、どうすれば良いのだろうか。これからどのようなビジネスが必要とされるのだろうか。
これから、「社会性」は、ますます重要なキーワードとなり、「経済」と両立させることが持続可能な地域づくりに向けた大きなターニングポイントとなることを認識し、7日目の講義を終えた。