魚津三太郎塾第5期の2日目が開講。本塾最初の講義は,富山の水資源と富山湾について地球環境の観点から学ぶ「高低差4000環境論」としておこなわれ,生命循環の源である水循環と背景にある魚津の自然環境とその特異性について学び,富山と魚津の水循環の魅力と水循環をテーマにしている意義を確認した。
事務局の前田久則氏から、魚津三太郎塾受講時および質問時の心構えと注意事項について説明。
「講師に敬意を払い,時間を厳守し,欠席・遅れる場合は連絡すること」「メモは各自でとること」「塾生全員必ず1回は質問すること」「講師は初対面なので質問前に社名や名前を述べること」「最初に一言で要点を述べ,その後は簡潔に質問すること」を塾生に伝えた。
「知識や常識に頼って判断すると誤りに気がつかない落とし穴がある。疑わしい時は自分で確かめよう」知識や常識にとらわれずに考え,自分で確かめることが大切と研究の基本の考え方を伝授。富山の水資源と魚津の高低差4000の環境が生み出す水循環について講義。環境省が選んだ日本の名水百選に選ばれた名水数について,昭和版・平成版合わせても北陸・富山が全国で最も多いことを示した。大きな要因として冬の降雪量の多さをあげ,北陸に雪が多い理由を地形や海流から解説。大陸からの寒気の流れ,日本海での雲の発生,3000m級の立山連峰を背にする富山の地形などの条件が揃い多くの雪が降ると説明し,冬の降雪が富山の豊富な水量を支えていると話した。さらに、水の美味しさについて成分や水質から鑑定できるとし,水のイオン濃度をプロットしたグラフの形から水質を目に見える形で表現させ比較できると説明。水の美味しさは硬度と塩素に影響されると示し、美味しさの数値化についても説明。水は地中内の地質に含まれる鉱物の影響で味に違いがでると話し,富山の水が美味しいことを学術的に講演した。
また,富山の地形は世界の気候のショーウィンドウと話し,立山山頂の北極圏から富山湾に流れ込む赤道由来の対馬海流まで,きれいなグラデーションで地球のすべての気候が味わえると高低差4000mの富山の魅力を伝え,特に魚津は30kmの範囲で高低差3400mという世界の縮図で世界的に希なコアフィールドであると話した。さらに,富山湾の海底から湧出している地下水についても紹介。魚津の高低差3400mの地形からの低温で清潔な海底湧水のおかげで数千年から1万年前の魚津埋没林が保存されたと話し,この海底湧水を採取し化学成分の分析について紹介。
水のDNAともいえる酸素同位体の分析により,その水の出所が判別できトリチウム濃度の分析から年代も判別でき,湧水の水源や時代が分析できると説明。海底湧水は降水から地中に浸透し10年から20年かけた海に辿り着いたと話し,海の豊かさは森の恵みの影響で水の輪が作った奇跡という意味の「樹1本鰤千本」という言葉を紹介。村木小学校の植林活動の取り組みを例に森の整備が豊かな海には重要なことであると話し,高低差3400mの地形が30kmエリアに存在する世界でも珍しい魚津で水循環をテーマにすることの価値を伝えた。
さらに,「天然のいけす」とも称される富山湾についても講義。日本海に生息する魚介類800種のうち500種が富山湾に生息を確認されていると話し、富山湾内の地形や環境,ホタルイカやオオクチボヤの生態を紹介した。また,今年のブリの不漁について海環境やエサ環境など要因をあげ富山湾に回遊しなかった理由を解説した。
最後に塾生へのメッセージとして,明確・簡潔な論点で説得力・分かりやすい合理的な構成で論述し,論点と一致するインパクトある訴えができる結論をだすこと。成功の鍵として「常に異を意識し,軸を持ちながら発想を自由にすること」「多方向、ワンゴール」「賢い、怠けではない」「責任を持つ,遊びを忘れない」といったキーワードを紹介した。
今回の講義内容の質疑応答や感想をもとにした討議がおこなわれた。塾生からは魚津の自然環境や地形,河川と地下水や富山湾の変化について、自然環境と生態系について,魚津の水のブランド化や情報発信についてなど様々な視点からの質疑がなされた。張教授からは富山の水資源の重要性や富山湾の魅力,魚津の特異性などが示され,魚津の水循環をテーマにする様々な可能性を塾生たちは感じ取った。