魚津三太郎塾第5期
魚津市/富山大学

事業レポートReport

魚津三太郎塾第5期 9日目

2016年7月29日
コミュニティビジネス育成起業化論①
開催日時:平成28年7月29日(金)14:00〜17:00
場所:魚津市役所第1会議室

魚津三太郎塾第5期の9日目が開講。コミュニティビジネス育成起業化論として,和歌山県田辺市の株式会社たがみ専務取締役の田上雅人氏を講師に招き,地域循環型農業を実現させた「熊野米プロジェクト」の取り組みについてヒアリングし,ビジネス手法での地域課題解決やコミュニティビジネスの事例を学んだ。

9日目 第13限 

コミュニティビジネス育成起業化論①
 商から農へ 地域循環型農業
 「熊野米プロジェクト」に取り組む
講師:株式会社たがみ 専務取締役 田上雅人氏
魚津三太郎塾第5期 8日目

和歌山県田辺市の株式会社たがみが取り組む「熊野米プロジェクト」の経緯や背景,事業内容や展望などについて説明。田上氏は,1944年創業の田上米穀店に生まれ、高校卒業後,京都の老舗米穀店で4年間の修業後,家業に従事し,商工会議所や商店街振興組合連合会,観光協会などを通じての地域での様々な活動や若手メンバーとの協働で熊野広域での異業種交流と勉強会をしてきたこと,イルカとのふれあい事業や祭り・映画祭などのイベントを開催し続けていることを紹介。地域の課題解消を考えて,本業の米穀店として販売だけでなく生産にも携わろうと取り組んだ「熊野米プロジェクト」について説明。

熊野地域は,昔からめはり寿司や、さんま寿司、さば寿司など、コメの食文化が豊かなで当然,地域の米で作られていたが,現在では県外産ブランドに押され,地元の米の評価や需要が下がってきたことで農家の米離れのよる耕作放棄地が増えてきたことに危惧し,お米の地産地消を目指す「熊野米プロジェクト」に取り組み始めたと話した。熊野米は栽培品種にヒカリ新世紀を用い,栽培時の差別化として,地域特産物である梅の加工で生じ産業廃棄物扱いになっていた梅調味液の再利用を考え,県農林水産総合技術センターなどの研究機関の協力を得て同液に水田雑草発生を抑制する効果を確認し,田植え時に利用することで除草剤に頼らない水田雑草管理をするこことにし,自身や協力農家で生産を計画。

農商工連携事業計画認定を受け事業は進められ,熊野米ブランドのデザインを当時パリ在住のデザイナーに頼み制作,ホームページやSNSなどを活用したネットでの広報をして,初出荷ではテレビや新聞のメディアでも取り上げられ話題となったことなどを紹介。さらに,熊野米を利用したリゾットやパンなどの新商品の開発や国内外の商談会への出展の状況やプロジェクトの取り組みが,2013年と2014年の「フードアクションニッポンアワード」入賞を果たしたことなども説明紹介した。

「目指すのは“地元へ帰ってきたくなるまちづくり”であり,地元商工事業者とも連携させ,大人の輝く姿を子どもに見せることが大切」と話し,「休耕田をビジネスに変え,農地を大切にしないと将来お米がなくなっていく」と懸念した。最後に株式会社たがみの会社理念「地域を見直し,新しい価値を創造し,モノとココロが一緒に流通する」「共有・共感・共鳴」という言葉あげ自身の考えや思いを伝えた。

質疑応答&討議 

論点1 ビジネス手法による地域課題解決とは
論点2 企業と地域の関係 様々な地域プレイヤーとの連携

冒頭に,金岡教授から和歌山県田辺市についての概要紹介や先月開講した富山大学と連携した地域再生塾について紹介。今回の講師である田上氏とのエピソードなども紹介。今回の講義内容に関しての塾生からの質疑と講師からの応答が行われ,熊野米プロジェクトの苦労点や熊野米について,熊野地域の農業についてや地域課題の解決手法,パリでの商談会の様子についてやネット広告の活用について等々多岐にわたる質疑応答され,地域課題を解決させるコミュニティビジネスの実行先進事例から塾生は様々なエッセンスを学んでいった。田上氏は「企業として長く生き抜くためには人を育てていくことが大切。メディア等で取り上げられると次に続く人が出現するが,追い抜かれても大丈夫なように常に先に進んでいくことが重要」と話した。