魚津三太郎塾第5期
魚津市/富山大学

事業レポートReport

魚津三太郎塾第5期4日目

2016年5月20日
高低差4000環境論
開催日時:平成28年5月20日(金)14:00〜17:00
場所:魚津市埋没林博物館研修室

魚津三太郎塾第5期の4日目が開講。高低差4000環境論の2回目として魚津の自然環境について“さかな”と水循環の観点から学び,魚津の水循環の魅力や魚津の生物多様性・生態系の中での企業の立ち位置を考え,今後の事業計画へのヒントを探った。

4日目 第7限講義

講義&討論 高低差4000環境論②
“さかな”と水循環 〜森・里・海と魚〜
講師:魚津水族館 館長 稲村修氏
魚津三太郎塾第5期4日目

魚津水族館は,日本で現存する最古の水族館であると魚津水族館の歴史を紹介。初代魚津水族館は,北陸本線全線開通を記念して大正2年9月に開催された富山県主催「一府八県連合共進会」の第二会場として建設,日本海側で初の水族館であり,ホタルイカ研究や世界で初めてマツカサウオの発光を発見した世界の研究者も注目した水族館であることを説明。二代目魚津水族館は、昭和29年4月に開催された富山産業大博覧会の魚津会場として日本海側最大の水族館として建設。三代目魚津水族館は,日本海側最大級の水族館として昭和56年4月にオープン。平成25年3月に創立100周年記念リニューアルをし,展示について「もっと富山にこだわりたい」「世界の環境を伝えたい」「水族館の裏方を見て欲しい」をコンセプトにした施設となっていると説明。

富山の自然環境について,標高約3000m級の北アルプス立山連峰から水深約1000mの富山湾を有する高低差4000mの世界でも稀有な地形であり,特に魚津はその代表的な場所であると話し,毛勝三山などの高い山々から流れる片貝川・早月川・角川といった急流河川が注ぎ込む富山湾の急に深くなった地形について説明。富山の生物多様性,多様な生態系について触れ,富山湾のある日本海は外洋との海峡部が浅いという地形的特徴を説明し,日本海は世界の海洋環境の縮図であり,その中心の富山湾は日本の縮図であり,魚津は富山の縮図であると話し,本塾テーマである魚津の水循環の重要性を強調。富山湾の断面図で,沿岸表層水・対馬暖流水・深層水・日本海固有水・低層水などについて説明。魚津の地形を解説しながら,魚津の川と海に生息する“さかな”を河川上流から深海域まで順次紹介。魚津の河川は急流なので上流域と中流域しかないのが特徴である生息する淡水魚を上流域のイワナ・ヤマメからマス・鮎・カジカ類などを様々なエピソードを交えて紹介,特にイワナは日本で最も高い標高地で生息していると話した。

また,富山湾に生息する“さかな”を表層域から深海域までの順に紹介。富山湾は全国で自然海岸の割合がワースト3であることや富山湾の特徴を説明。富山湾の表層に生息するシロギス,イワシなどから,移行層水域のイシダイ・クロダイ,寒の如月王の魚津ブランド魚にもなるウマヅラハギ,沖の女郎とも言われるヒメジなど様々な魚を紹介。水深100mから200mに生息するホッケやスケトウダラ,ガンコなどや,日本海固有水の深層域で生息するクロゲンゲ・ノロゲンゲ,紅ズワイガニやバイ類,ホッコクアカエビなど富山湾に生息するバラエティ豊かな魚を生態や料理法などのエピソードを交えて紹介説明した。また,魚津発祥の紅ズワイガニのカゴ漁についても紹介した。また,県が制定した富山県のさかな「富山湾の王者ブリ」「富山湾の神秘ホタルイカ」「富山湾の宝石シロエビ」の3種だけでなく,魚津の代表格の“さかな”である「ウマヅラハギ」「ゲンゲ」「バイ」「ナンダ」も“富山のさかな”に加えてもらいたいと話した。

質疑応答・討議 

魚津の自然
魚津の水循環(魚津の生物多様性・生態系)を構成しているものは?
自分の企業はそのどこにあるのか?立ち位置は?
論点1「魚津の水循環」の魅力,今後のゆくえ
論点2 企業の技術力・経営資源を生かし水循環とどのように関わり,何をすべきであろう

今回の講義内容への質疑応答や感想をもとにした討議がおこなわれた。塾生からは富山湾の河川の環境変化と生態系の変化についてや,気候環境の変化や人為的影響による生態系の変化について,魚津水族館の活用やホタルイカの生態・富山のさかなについてなど様々な視点からの質疑がなされた。

稲村館長からは「日本は水の災害から人命・財産を守る治水を最優先に考えてきたことにより護岸に住める魚を減らすことになり,生物の生態や習性を無視したこと反省するようになった。

人為的・自然の変化によりどのような影響が生じるかを考えることが重要で,環境の変化に適応することが大切」と話し,魚津の水循環を生態系から捉えた各塾生の立ち位置と課題や方向性を討議を通じて探った。