魚津三太郎塾第5期の8日目が開講。地域再生システム論として,地域づくりコーディネーターとして様々な事業に携わる株式会社ワールドリー・デザイン代表取締役の明石あおい氏から,まちづくりや地域活性化についての考えを学んだ
今回の講義は,冒頭に塾生へ紙と筆記用具が渡され,対話と討議・発表を交えたワークショップ形式で進められた。まず,「地域活性化・まちづくりとはどういうこと?」と問い,塾生たちの意見や考えを1分間で紙に書き出してもらい,前後の塾生間で話し合って意見を発表。発表された意見をホワイトボードに貼った模造紙に明石氏が書き出し,塾生らの地域活性化の考えをまとめ「地域活性化は賑わいをつくることを目的にするのではない。賑わいは結果のひとつでしかない」と地域活性化について説明。次に「“まちづくり”ってなんだろう?」と問いかけ,同様手法で塾生たちの考えを発表させた。
「まちづくり」という言葉を広めた日本の地域政策プランナーであった故田村明法政大学名誉教授の言葉「“都市計画”が縦割りでは本来の機能を果たさない。もっと柔軟で市民的な“まちづくり”という発想が必要だ」を示し,行政主導でなく市民がつくるモノであると紹介。明石氏自身の考えとして,「暮らすことそのものが“まちづくり”であり,普段(不断)の終わりない改善のプロセスの積み重ね」と話し,「まちを賢く使うのも“まちづくり”で,使わないモノもでも知ることで使うことができるものが多い」と説明した。
自己紹介を兼ねて,自身がこれまで取り組んできた人と人の出会いと交流をサポートするまちの情報発信拠点「まちの駅」について,まちの駅のコンセプトや形態,展開など説明。また,これまで仕事で出会った全国のまちづくりに携わっている5人の人物を紹介。「知ってることよりやれること」「すべての人に“はまり役”がある」「いいね。もっとこうしよう♪」「大事なのは続けること」「自分が目になること」の言葉を紹介しながらその意味やエピソード・事業内容などを話した。また,まちづくりは「繕う」こと「まちづくろう」であると話し,その人のホームに出向き,良いと思ったことを自分の方法で人に伝えることが大切であることを,栃木県大平町の町民全体がコンシェルジュになる「おおひらコンシェルジュ」事業の事例を紹介しながら説明した。その後,初代富山県定住コンシェルジュとして富山にUターンして感じたことは,富山の観光でなく日常の素晴らしさを伝えていないことと話し,日常の風景や生活の豊かさ・楽しさなど「そこらへんにあるもの全部宝もの」であり,魚津の円筒分水槽が日本一美しいと言われるように生活の中に当たり前にある様々なモノが魅力的であり,特に目に見えないモノが力強い魅力を醸し出すと説明。
また,地元の人が自慢としているものにも現実とのギャップと違和感を感じることが多く,食べ方や使い方など生活の中での特徴を魅力として新たに加えていくことが大切と話した。現在の活動として,あいの風とやま鉄道の沿線ガイドや雑誌「itona」の取組も紹介。また,近いモノほど軽んじてないかと問いかけ,「当たり前」「知ってるつもり」「それやったわ」という思いが近いモノが持ってる魅力を見落とすことになると説明。現在の活動の拠点を置く射水市新湊の内川周辺の風景や祭りの写真を示しながら,まちの当たり前が魅力的なモノであることを語り,同地区の空き家をリフォームして喫茶店として営業している様子や古民家をリフォームして本社事務所を移転させたことなど紹介した。さらに,まちづくりの大事な視点について話し,「あれも,これもをやめること」「いいと思うものを自分の言葉で伝え,悪いところ足りないところも自分で考えること」「できるところまで,ルーツをさかのぼり背景をとらえ直すことで存在意義が見えること」「どうせやるなら,徹底的にやってみること」が大事であると話した。
ワークショップとしてA4用紙に3つの円を重なるように画き,やりたいこと(want)・できること(can)・しなければならないこと,地域の課題(task to)を各自が書き込む作業がおこなわれた。この手法により,各部の重なる場所は自己実現できること,奉仕(ボランタリー)すること,社会貢献になると説明を受け,塾生たちは各自が思い描く事柄を書き込み,整理作業をした。書かれた内容を全員の前で発表し,今後の事業計画作成への方向性や思いを明確化させていった。